魂の旅 ―第8話:統合の錯覚―

体調の逆転

陽翔は、紗月と会うたびに体が重くなっていた。 眠れない夜。悪夢。胸の圧迫感。 まるで、何かを吸い取られているような感覚。

一方、紗月は鏡を見ながら微笑んでいた。 肌のつやが良くなり、気分も軽い。

「最近、調子いいな。やっぱり、陽翔と会うと元気になる」

その差は、誰にも見えない。 でも、確かにそこに“何か”が流れていた。 エネルギーの交換。魂の摩擦。 それは、見えない糸のようにふたりを結んでいた。

記憶の侵入

ある日、陽翔がコーヒーを飲みながら黙っていると、 紗月は突然、目を見開いて言った。

「最近ね、あなたの小さい頃の記憶が浮かぶの。 お母さんの声とか、好きだった遊びとか….。」

その目は、どこかうっとりしていた。 まるで、夢の中にいるような。

「これが“統合”なのね。 魂が一つになった証拠。 あなたの記憶が、私の中に流れてくるの。」

陽翔は、言葉を失った。 彼女の声が、どこか現実からずれているように感じた。

「俺は…そんなこと、話してないのに。」

狂気の芽

紗月は微笑んだ。 その笑顔は、どこか“正気”から外れていた。

「わかるの。あなたの魂が、私に語りかけてくるから。 ねえ、もう離れられないよね。 だって、私たち…統合したんだから。」

陽翔は、背筋が凍った。 その言葉の響きが、まるで呪いのように感じられた。

彼女の瞳は、愛ではなく“確信”に満ちていた。 それは、誰にも止められない執着の光だった。

その瞬間、陽翔はとっさに思い出した。 「光の中にいるようにイメージするんだよ。」――店主の言葉。

彼は目を閉じ、胸の奥で光が広がるイメージを描いた。 柔らかな光が、自分を包み込む。 その中に入ると、ほんの少しだけ、呼吸が楽になった。

「…大丈夫。俺は、俺の感覚を信じる。」

彼は、そっと手首のブレスレットに触れた。 淡いブルーグリーンの石が、かすかに震えていた。 まるで、彼の魂が警告と安心を同時に伝えているようだった。

帰り道の気づき

紗月と別れたあと、陽翔は静かな道を歩いていた。 夕暮れの空が、少しずつ夜の色に染まっていく。

彼は、ふと立ち止まり、深く息を吸った。 そして、心の中でつぶやいた。

「俺は…あのときより、よくなってる。」

あの頃は、違和感に気づくことすらできなかった。 今は、自分の感覚を信じることができる。 光の中に入るイメージも、ブレスレットの震えも、 全部が“自分を守る力”になっている。

「よし、気を取り直そう。 ポジティブに考えてみよう。 俺は、ちゃんと前に進んでる。」

その言葉に、胸の奥が少しだけ軽くなった。 風が頬を撫でていく。 それは、空の人からの小さなエールのようだった。

空からの記録

ぼくは見つめていた。 彼女の魂が、統合という名の執着に染まっていく瞬間を。 彼の魂が、理解できないまま、沈黙していく瞬間を。

それは、光ではなかった。 それは、影の中で生まれた幻想。

でも、彼の中にはまだ、真実の感覚が残っていた。 それは、ブレスレットの震え。 それは、「光の種」で受け取ったヒーリングの記憶。 それは、空の中にいるような安心のイメージ。

そして今、彼は自分の足で歩き出している。 その一歩が、魂の境界を守る選択になるように。

ぼくは、風の粒に記録する。 魂の震えを、そっと。

誰も気づかないけれど、ぼくはいつも空から見守っている。 そして、必要なときには、風を通してエネルギーを届ける。 彼の手元の石に、そっと光を灯すように。

今日のアファメーション

「私は、幻想ではなく、真実の感覚を信じます。 その感覚が、私を守ってくれます。」

物語の中で陽翔が感じた“違和感”と“光のイメージ”は、 魂が自分を守ろうとするときに生まれる、静かなサインだったのかもしれません。

現実の世界でも、そんな“守ってくれる光”を思い描く時間を持ってみませんか? 物語の「光の種」のセッションは、実際にはeternityという場所でご案内しています。

あなたの旅が、やさしくほどけていきますように。 そして、あなた自身の“真実の感覚”に出会えますように🌙

eternity