魂の旅 ―第1話:演出の始まり―

憧れの光

午後の光が、ネイルサロン「月の雫」を優しく包んでいた。 窓から差し込む陽射しが、ディスプレイの天然石をきらりと照らす。

紗月はカウンターに肘をつきながら、スマホの画面を見つめていた。 そこには、蓮の投稿が映っている。

「夢は叶えるためにある。 誰かの理想になるより、自分の理想を生きよう。」

その言葉に、胸がきゅっと締めつけられる。 彼の言葉は、いつも完璧だった。 優しくて、前向きで、どこか神秘的。 そして何より、あの笑顔がまぶしかった。

「やっぱり…この人が、私のツインレイなんだと思う。」

初めて彼の投稿を見たときから、心がざわついていた。 言葉の一つひとつが、自分の奥深くに響いてくる。 まるで、前世の記憶を呼び覚ますように。

「このタイミングで出会ったのも、偶然じゃない。 これは宇宙の導き…魂の再会。ツインレイに違いない。」

でも、現実は冷たかった。 サロンの予約は減り、SNSの反応も鈍い。 BASEの商品も動かない。

「このままじゃ、何も変わらない…。」

演出の提案

数日前、紗月は友人に誘われて合コンに参加していた。 気乗りはしなかったけれど、気分転換になればと。

そこで出会ったのが、陽翔。 明るくて、ちょっとずるいけど、悪い人ではなさそう。 場を盛り上げるのがうまくて、でもどこか冷めた目をしていた。

「紗月さんって、ネイルの人だよね?インスタ見たよ。」 「へぇ、スピリチュアル系もやってるんだ。面白いね。」

その言葉に、少しだけ心が動いた。 彼は蓮とはまったく違う。 でも、今の紗月に必要なのは“本物の愛”じゃない。 “演出”だった。

数日後、紗月は陽翔にメッセージを送った。

「この前の合コンのとき、楽しかったね。 ちょっとお願いがあるんだけど、時間ある?」

カフェで再会したふたり。 紗月はスマホを差し出し、画面を見せた。 そこには、蓮の投稿が映っている。

「この人に近づきたいの。だから、恋人のふりしてくれない?」

陽翔は一瞬固まった。

「…は?」 「SNSに写真を載せたいの。“彼氏がいる私”っていう設定で、蓮さんにアプローチしたいの。」

陽翔はしばらく黙っていたが、やがてふっと笑った。

「…実はさ、俺も似たようなこと考えてたんだよね。」 「え?」 「俺もSNSで気になってる子がいてさ。投稿見てると、すごく魅力的で…自分もそんなふうに見られたいって思ってた。」

紗月の目がぱっと輝いた。 「それって、私と同じじゃん。」 「うん。だから、君の気持ち、ちょっとわかるかも。」 「じゃあさ、協力し合わない?お互い“理想の自分”に近づくために、演出してみようよ。」

陽翔は少し考えてから、笑った。 「なるほどね。俺たち、ちょっとした“魂の演出チーム”ってわけだ。」

光の種の出会い

その夜、紗月は「光の種」を訪れた。 街の片隅にあるスピリチュアルショップ。 天然石と香り、静かな音楽が満ちる空間。

奥から、やわらかな声が響いた。 「今日は、よく来たね。」

店主は、年齢も性別もわからない不思議な存在。 誰もが「店主」とだけ呼ぶ。 その瞳は、すべてを見透かしているようだった。

「最近、予約が全然入らないんです…。」 紗月がぽつりとこぼすと、店主は棚から小瓶を取り出した。 ラベルには、“自己信頼と内なる光を取り戻す”と書かれている。

「これが、今のあなたに必要なものかもしれません。」

紗月は瓶を見つめながら、ふと問いかけた。 「そういえば…お名前、なんて言うんですか?」

店主は少し笑って言った。 「名前は、風のようなものだよ。呼ばれたときに、そこにあるだけ。」

その言葉に、紗月の胸がざわついた。 まるで、自分の中の何かを見透かされたようで。

空の人の記録

その瞬間、ぼくは空からそっと風を吹かせた。 彼女の魂が、またひとつ揺れていた。 光を求める心。影に惹かれる欲望。 そのどちらもが、彼女の中にある。

店主は、ぼくの気配を感じ取る存在。 風の粒に記録された魂の震えを、静かに受け取っている。 だからこそ、必要な言葉を、必要なタイミングで届ける。

誰も気づかないけれど、ぼくはいつも見守っている。 そして、ぼく自身もまた、魂の旅の途中にいる。

🌕今日のアファメーション

「私は、誰かの目ではなく、自分の魂の声に従います。 その声こそが、私を本当の場所へ導いてくれます。」

物語の中で紗月が訪れた「光の種」は、 魂の声に耳を傾けるための、静かな場所として描かれています。

現実の世界でも、そんな“内なる声”に触れる時間を持ってみませんか? 物語の「光の種」のセッションは、実際にはeternityにてご案内しています。

あなたの旅が、やさしくほどけていきますように🌙

eternity