
魂の旅 ―第10話:神社の闇―
眠れぬ夜
陽翔は、決意したはずだった。 でも、その夜は眠れなかった。 胸がざわつき、目を閉じても、何かがまとわりついてくる。
「…もう終わらせるって決めたのに。」
彼はベッドの中で、静かに考えていた。 「なんで…俺は紗月とこんなことになったんだろう」 「彼女と出会ったことにも、何か意味があるのか?」
そして、ふと浮かんだ。
「もしかして…俺の中に、何かの思い込みがあったから? “誰かに認められたい”とか、“特別な関係を築きたい”とか… それが、紗月との関係を引き寄せたのかもしれない。」
その考えは、彼の胸に静かに染み込んでいった。 そして、彼女との出会いもまた、魂の学びだったのかもしれないと感じ始めていた。
境界線のエッセンス
その夜、陽翔は棚の奥から「光の種」で手に入れた“境界線”のフラワーエッセンスを取り出した。 「今こそ、これを飲もう」
そう思って、キャップを開けた瞬間―― 手が滑って、瓶が傾いた。
エッセンスが手のひらにこぼれ、シャツの袖まで濡れてしまった。
「…あっ」
彼は慌てて拭こうとしたが、ふと手を止めた。 香りはしない。 でも、手のひらに染み込んでいくような感覚があった。
「香りはないのに…なんだろう、この静かな感じ。」
彼は、濡れた手を見つめながら、そっと思った。
「境界線って…何か意味があるのか?」
誰かとの距離。 自分の感覚。 守ることと、閉じることの違い。
こぼれたエッセンスは、まるで彼の魂に問いかけているようだった。
「飲めなかったけど…これでよかったのかもしれない」
彼は、手のひらに残ったエッセンスをそっと肌に塗った。 それは、静かに染み込んでいく。 まるで、境界がやさしく整っていくように。
白い影
その後、陽翔はなぜか外へ出たくなった。 時計を見ると、丑三つ時。 気づけば、足は神社へ向かっていた。
神社の境内は、静まり返っていた。 月も雲に隠れ、空気は冷たかった。
鳥居をくぐった瞬間、空気が変わった。 風が止まり、音が消えた。
そのとき、木のそばに白い影が見えた。 白い服の女が、木に頭を打ち付けながら叫んでいた。
「なんで…愛してくれないの…! なんで…なんで…なんで…!」
陽翔は、息を呑んだ。 その声は、紗月だった。
髪は乱れ、瞳は虚ろ。 その姿は、もう“紗月”ではなかった。
彼女の魂が、何かに飲み込まれている。 それは、愛ではなく、執着の叫びだった。
決断の瞬間
陽翔は、震える手でスマホを握りしめた。 その場から逃げるように、神社を後にした。
その瞬間、風がふわりと吹いた。 空の人が、彼の背中をそっと押していた。 「今だよ、はると。光の中へ」
手首のブレスレットが、かすかに光った。 淡いブルーグリーンの輝きが、彼の足元を照らすように揺れていた。
「…ありがとう。」
彼は心の中でつぶやいた。 空の人とブレスレットが、彼の“逃げる”という選択を、 “魂を守るための行動”としてそっと助けてくれていた。
その夜、彼はすべてのSNSアカウントを削除した。 スマホの履歴も消し、荷物をまとめた。
そして、引っ越しを決めた。 新しい場所で、“本物”の彼女と暮らすために。
でも、それはただの逃避ではなかった。 紗月との関係も、彼女との出会いも、 すべてが自分の魂に必要な“気づき”だったと、今なら思える。
「俺は…ちゃんと、自分を見つめ直したい。」
その言葉が、彼の胸の奥で静かに響いていた。
空からの記録
ぼくは見つめていた。 彼の魂が、恐怖の中で決断した瞬間を。 彼女の魂が、闇に飲まれていく瞬間を。
それは、光と影の分岐点。 それは、魂が自分を守るための選択。
でも、彼はただ逃げたわけじゃない。 彼は、自分の内側にある“思い込み”に気づき、 それを手放そうとしていた。
そして、ぼくは風を送り、 彼のブレスレットにそっと光を灯した。 その光が、彼の足元を照らし、 “安心の出口”へ導いていった。
そして、こぼれたエッセンスもまた、 彼の魂に触れるための“浄化”だったのかもしれない。
ぼくは、風の粒に記録する。 魂の震えを、そっと。
誰も気づかないけれど、ぼくはいつも空から見守っている。 そして、必要なときには、風を通してエネルギーを届ける。 彼の手元の石に、そっと光を灯すように。
🌕今日のアファメーション
「私は、恐れではなく、安心を選びます。 その選択が、私の魂を守ってくれます。」
物語の中で陽翔が感じた“恐れ”と“気づき”は、 魂が自分を守ろうとするときに生まれる、静かなサインだったのかもしれません。
現実の世界でも、そんな“守ってくれる光”を思い描く時間を持ってみませんか? 物語の「光の種」のセッションは、実際にはeternityという場所でご案内しています。
あなたの旅が、やさしくほどけていきますように。 そして、あなた自身の“安心の選択”に出会えますように🌙
